ヨガエッセイコンクール 2003年度 入賞作

2003年度・最優秀賞
ヨガ教室に通ってかわったこと

大分西学園 安藤 薫さん

2000年5月10日(水)
午後11時帰宅。手洗いとうがい。「オエーッ」。吐き気。少し戻した。昨日からの吐き気だが別に気にしてなかった。夕食を取らずに入浴。入浴中も何度か 吐き気と嘔吐。なにか悪いものでも食べたかなあと思いながら、寝る前の歯磨き。「オエーッ」。ガラガラガラ…「オエッー」。お腹のすき過ぎかな? 早く寝ようと思った時だった。もの凄い吐き気と嘔吐が続いた。立っていられなくなってきた。苦しくなってくる。呼吸ができない。(苦しいよー。) その場で倒れ。過呼吸。「救急車呼べー!」父親の大きな声が聞こえた。(なんで?なんで?)自分に質問している自分がいた。涙が目から出ていた。悲しかっ た。悔しかった。
本当はわかっていた。全てわかっていた。心と体がSOSを発しているのに、私自身はそのことを長い間、無視してきた。どうしていいかわからなかったが、や るだけのことはやった。やればやるだけ「違う、違う」と心が、私自身が叫んでいた。最悪の事も何度も考えた。それを実行したら負け。「負けたくはない。」 それだけで何年も過ごしてきた。救急車を待っている間、思わず叫んだ。「もう、いいかげんにしろよ、ふざけるんじゃねえよ。人の気持ちをもっと考えろよ。 ムチャムチャ傷付いているんだよー。」過呼吸だから言葉にはなってなかった。

5月12日(金)
退院した。心と体が限界だった。でも、これから何を如何をしたらいいのかわからん。体は医者にかかる程悪くない。"心"の問題なの?頭の中でゴチャゴチャ考えていたら妹が「お菓子食べる~?」と、ニコニコしながら部屋に入ってきた。
「お姉ちゃん、ヨガはいいよ。その時だけでも何も考えなくていい時間があるよ。夜はグッスリ寝れるし。」夜、眠れる? 何も考えなくていい? 何でもいい週1回だけでもグッスリ眠れるなら。やろう。ヨガ!でも…又ゴチャゴチャ考え始めた。あ゛ー、いいや!限界まできたんだ。とにかくやってみよ う。考えるのはそれからでいい。「ヨガに行こう!」

7月5日(水)
会社が終わり教室に向かった。時間より早く着いた。ドキドキしながら教室に入っていった。「こんにちは。」2人のご婦人から挨拶していただいた。「こん にちは」声を詰まらせながら挨拶をした。かなり緊張している。行くと決めたのはいいけど、新しい人に当然出会うよなぁ…。新しい人に出会うことはまた、新 しい人の目がある。新しい目がある…、ゴチャゴチャ考えた。その頃、私は人の目が怖くて大嫌いだった。
「好きな所に座っていいよ」と別のご婦人に声をかけていただいた。「安藤 薫です。よろしくお願い致します」と、先生かと思って挨拶。始まるまで、教室の端の一番後ろで、やはりゴチャゴチャ考えていた。
「こんにちは!!」 一段と大きく明るい声が教室に響いた。先生と私が思っていたご婦人が「先生、新しい生徒さん」と、紹介してくれた。「あ、あ姉ちゃんのほうね。お母さんか ら聞いてるわよ。あっ!それからな…」と、さらりと紹介してくださったご婦人と別の話を始めた。あれ?それだけ?何か違う。今までの習い事の先生と違う。
ヨガをした。何がなんだかさっぱり解らなかった。先生の言う言葉はわかるけど、体が動かない。「わかからんよ」と考えていたら、次のポーズ。「手はこの辺 でいいのかな」などと考えていたら、次。「教えてくれないのかな」と思う間に次のポーズ。気がついたら無心にポーズだけとっていた。ほんとうに何も考えな い時間があった。
レッスンが終わった。先生に言われたことは「週に1回は必ずおいで。きつくてもいいからおいで。きつくてここで寝てもいいからおいで。とにかく、水曜日に おいで。」全く予想していなかった対応、接し方にビックリした。とても新鮮だった。なぜか嬉しかった。とてもとても暖かかった。不思議な人だー。

7月6日(木)
気づいたら朝になっていた。久ぶりに爆睡した。夜中に目が覚めなかった。布団から出ようとすると、体中が痛くて体が動かない。普通の筋肉痛と違う。筋肉の中まで痛い。喉の中までもが痛い。「なんじゃこれは!」痛みは一週間も続いた。「ヨガ」おそるべし。

9月13日(水)
ヨガ教室の日。終業10分前、仕事の片付けを静かに始める。定時、会社を急いで出る。会社以外に自分に行くところがあるのが嬉しかった。ポーズはまだまだ出来ない。でも、水曜の夜は眠れる。嬉しかった。
この頃、顔の筋肉が痛い。特に木曜日が痛い。水曜日、教室の人達の会話を聞いて、見ているだけで楽しかった。楽しいと自然と笑顔になる。私は顔が筋肉痛になるくらい顔に表情がなかったし、笑ってなかったと気づいた。
「薫ちゃん、今度11月アレクサンダー・テクニークていうのがあるの。体がとても楽になるし、私は薫ちゃんにとっていいと思うのよ…」と、安部先生からさりげなく言われた。即答した。「受ける。します。」
アレクサンダー・テク・・・? 初めて聞く。体が楽になるなら、ワケ解らんけど、いい。

11月11日(土)
初めてのアレクサンダー・テクニークの日。ヨガ教室の人が何人かいるので安心して部屋の中に入った。「こんにちは。」聞き馴れない関西イントネーション の挨拶。お!この男性がアレクサンダー・テクニークさん? 博美先生は国際的だなどと勝手なことを思い、ワークを受けた。凄かった!頭の天ぺんから炭酸がスッポーン!とトビ出てきた。なんじゃこりゃ! 頭を何度も 手で抑えた。安部先生は「いいのよ。大丈夫。大丈夫」と、何が起こっているのか解っているようで、変わりなく接してくれた。「大丈夫と言われも、頭から炭 酸が出るんだよ…」と思っていたら、次に腰の骨が上下にもの凄い勢いで伸び始めた。私の体…。もう何も考えられなかった。想像つかないことがあまりにも多 く体の中で起こった。ワークが終わった。体が今までに感じたことも無い程だった。目もよく見える。このまま3階から飛び降りられそうなくらい軽くなった。 「ヨガ」、「安部先生」、「アレクサンダー」…? わからん!

2003年9月10日(水)
毎週水曜日、定時で帰社。「一週間に一回、必ずここにおいで。きつくてもいいから、寝ててもいいからおいで。とにかく水曜日においで」と先生から言われ て3年。ポーズも少しはできるようになった。なによりも、博美先生を通じて沢山の人やことに出会えたのが嬉しい。自らの辛い体験を話して下さった。「大丈 夫よ薫ちゃん」と言ってくれた。「大丈夫。あせらないこと」と言ってくれた。ときには、「どうしたん?今日は元気ないね」と気遣ってくださった。「頑張ら んでいいよ」といってくれた。嬉しかった。心遣いが、優しさが、本当に嬉しかった。同じ女性として、大切なことを沢山教えていただいた。世の中には嫌な人 もいるけど、心優しい人もいるんだ。この頃、少しづつだけど解ってきた。人の目も怖くない。人の目を見ることができるようになった。辛い思いもしたけど、 それがあるから今があるのかなーと思えてきた。
協会の研修に参加するための大阪への往復航空券を受け取った。最悪のことを考えた私がヨガの級をとる。沢山の人の支えがあってここまでこれた。独りではできなかった。独りじゃなかった。安部先生に逢わせてくれた母に感謝している。