国際ヨガ協会

ヨガエッセイコンクール 2010年度 入賞作

2010年度・エッセイ部門 最優秀賞
ここからはじまる 

大分西支部 村上朋子さん

4月にヨガを始めて、9月に離婚した。何の関係もない。が、ヨガはどん底の私を引き上げてくれた一つだ。
仕事人間だった私は、何をするにも仕事優先で、仕事を言い訳にして過ごしてきた。家庭の問題も仕事に集中することで忘れ去ろうとしたがもう限界だった。勇気を出して一人になる決意をした途端、やってきた不景気の影響。生きがいにしていた仕事が不安定になり打ち込むこともできず、気持をぶっつけるところがどこにも無くなった。「自分には何もない。」完全に道を失って、無気力で辛い毎日を送り続けていた。「このままでいいのだろうか? 自分にできることはないのだろうか?」そればかり考えていたが、仕事以外なにもしてこなかった私にはどうすることもできなかった。とにかく人の真似でもいいから何かしないとダメになると思い、友人が通っているヨガ教室を紹介してもらうことにした。「ヨガは癒されるっていうし体にも良さそうだな…。」そんな始まりだった。
当初は先生について行くのに必死で、「恥をかかないようにしなきゃ」というくだらない気持ちでいた。教室の先生や生徒さんは明るくて楽しそうで、仕事もしながらプライベートでも楽しみを持っているなんて…。違う世界の人を見ているような、自分はいったいなにをしてきたのか…。考えると泣きそうになる日がよくあった。
そんな“負のオーラ”全開の私も、しばらく経った頃、ある変化を感じ始めた。反りのひどい私の腰が、サヴァアサナをするとだいぶマットに付きはじめているのがわかる…。日によって体の状態が違っていることがわかる…。無心でポーズをとり、自分の呼吸にだけ意識が集中している! こんな些細なことが、私には人生の新たな一歩を踏み出した気持ちになるほどに、清々しく価値のあるものとなった。
正直、ヨガひとつでここまで前向きになれるとは思ってもなかった。精神面での助けが大きかった。紹介してくれた友人や先生に感謝したい。
ヨガについて語れるレベルにいないが、自分のように途方にくれている人がいたら迷わず勧めるつもりだ。
最初は自分の心や体に向き合うことが苦痛に感じられるかもしれない。でもそれを乗り越えたら必ず新しい自分を発見できると思う。私は身をもって体験した。今では「仕事も好きだけど、プライベートも充実している」とはっきり言える。
まだまだ硬い私の体も、ヨガを続けることで徐々にほぐれていくだろう。それと同時に私の気持ちもさらにほぐれることを楽しみに今日も教室へ向かう。

 

2010年度・エッセイ部門 優秀賞
レッスンと日常生活

近畿中央支部 大阪南学園 大島裕子さん

私がアレクサンダーテクニークのレッスンを受けている会場は、パンを焼く工房の近くにあります。会場の2階には鉄製の非常階段を上っていきます。階段を上っていくと、ちょうど右手の暗がりの中にパンの原料の粉のようなものが入れられた薄茶色の大きな袋や、でき上がったパンを入れるものなのか、緑色のプラスチックの箱が積み重ねられています。非常階段の音と共に粉っぽい上がり口に着くと、今日は一体どんな自分に出会えるのか、そんな気持ちで表のドアを開けます。靴箱に靴を入れ、板の間の廊下を歩きます。歩くと床がミシッと鳴り、室内のあたたかい空気とにおいが顔を通り抜けていきます。
左手にある和室で着替えをします。着替え用の衣類やマットは和室の押入れに入れてあります。私はいつも正座してその押入れを右手にして着替えますが、衣類やマットを取り出す時、以前ならば上半身を右にねじって手を伸ばして取ろうとしていました。レッスンを受け始めてから、その取り出し方が変わりました。衣類を入れている袋を見る、それを取り出そうと思う、その袋の前に立って座り、頭の後ろを意識しながらその袋を取り上げ、必要な着替えを取り出し、元に戻すということをするようになりました。
その動きの最中は少し背中が広がったような感じがし、動きがとても静かで、なんだかお茶席であらたまった動きをしている感じがします。
着替えを済ませ、マットを持ってレッスン室の扉の前に立ちます。この先にはどんな世界があるのかな?と思いながらドアを開けます。開けると長方形の白い部屋の左から、白い光が差し込み、一瞬左右が広がり、また元に戻って、私は先生を見つけて「こんにちは」と挨拶をします。
アレクサンダー・テクニークのグループレッスンを受け始めて、2年が経ちました。レッスンで実感したことや、知ったことが積み重なっていくと共に、得たものをすぐに放り出してしまうという自分と、それに固執して手放そうとしない自分がいることが分かりました。あきらめと執着の自分を行ったり来たりしているのです。「どうして中庸がないのかしら…?」やがて理解しました。私の物事への対し方がそうなのだということを。「それが弛緩と緊張です。そしてそれらがお互いに近づいていくことが変化なのですよ。」と先生が教えてくれました。毎日の生活で忘れかけているなと思った時、頭の後ろや目の奥を少し意識すると、いつも見ている台所のテーブルが低く見えたり、また実際座って食事をしていて足の裏を感じるようにすると、テーブル低くなったような感じがします。台所の壁紙や食器棚に触れると、その触感が瞬時に伝わってきて、それだけて心がじんわりとする気持ちになったことがあります。
いつも閉じようとしている感覚を、レッスンでは先生やグループのみなさんの手助けを借りて開いていき、日常では自分でどうしたら継続的に自分に働きかけをできるのか、できれば楽しくそれを行う方法を見つけていきたいと思います。

 

2010年度・エッセイ部門 優秀賞
心のヨガ してますか?

大分西支部 西村優子さん

6年前、私はヨガと出会いました。当時の私は劣等感の塊でした。周りを羨ましがり、「どうせ私なんて…」と、心の中で思う日々が続いていました。“顔で笑って心は泣いて”、忘れようと心に蓋をする、そんな状態でした。
「ヨガの体験に行くけど一緒に行かない?」友人の誘いでヨガに出会いました。昔から柔軟体操をしていたおかげで人よりも少しだけポーズができることが私の唯一の自慢でした。週一回のヨガで日頃の肩凝りが解消され、体が伸びて気持ちが良い。ポーズができるようになってくると、それだけで自信を持てるようになりました。
ヨガ3年目、新しい職場の人間関係がうまくいかず、自分の言うことなすこと全てを否定され続け、認めてもらえないことに、また自信をなくしていきました。それでも“顔で笑って心は泣いて”いる精神が体に染み込んでいたので、何も気にしていないフリをし続けていました。
新しい職場で1年が過ぎる頃、私は円形脱毛症になっていました。そしてそれはポツ、ポツ、ポツとどんどん転移していきました。ヨガ教室の日に気持ちは復活しても、一週間もたたずに気持ちは沈んでいきました。精神病院に行ってみようか…とか、カウンセリング受けたらよくなるかな…とか、あの人さえいなくなれば私はこんな思いをしなくてすむのに…と、周りばかりに原因を探し、「誰か私を助けて!」と他力本願になっていました。それでも私には、週一回のヨガ教室だけが唯一の救いでした。と同時に、私は何のためにヨガをしているのだろう? 私にとってヨガとはなんだろう?と考えるようになりました。
そうして徐々に、ヨガをしているときの自分の気持ちが変わっていることに気付きました。以前は『周りに自分がどう見られているか?」と気にしながらヨガをしていたのが、「自分の体は、今どのように感じているのか?」と考えるようになっていました。しっかりと呼吸をし、自分の内側に意識を向けるようになると、周りからどのように見られてるかなど気にならなくなっていました。いつしか私の意識は「左足の感覚が右足とは違うぞ」「背骨がつまった感じがするし、いつもと違うなー」「今日は右手さんはよく働いた!」と自分の体をいたわり慈しむようになっていました。体型への劣等感もなくなり、世界に一つしかない自分の体、五体満足であることに感謝という気持ちが湧き上がってきました。すると、職場での自分が変わっていました。相手の顔色を気にして怯えていたのが、自分から積極的に声をかけ、相手を理解しようとするようになりました。
そうした気持ちの変化を感じるようになって9ヶ月目、円形脱毛症は完全に良くなりました。劣等感の塊だった私は、自分自身をありのまま受け入れることによって劣等感を克服できました。
最近、ある人に質問されました。「あなたに劣等感はありますか?」と。その時、私は劣等感がなくなっている!と気付きました! 自分の中で『愛』が溢れてくると「これだけしてあげたのに、なんでお返しがないの?」と見返りを求める気持ちがなくなっていました。むしろ、より一層与えたいと心が思うようになりました。
私はヨガを通して自分自身と向き合い、ありのまま受け入れ、心身ともに元気になれました。ヨガは私の生活になりました。
私が私であるために、ゆっくり深呼吸して…。
心のヨガしてますか?

 

2010年度・自由表現部門 最優秀賞

近畿中央支部大阪南学園 黒田宏子さん

今朝も又
 生かされており
   蝉しぐれ


瞑想や
 息に気付きて
   長き夜は


平凡な
 日々ありがたき
   古稀の夏

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