[2]シルシのポーズ
神奈川・さがみの支部 尾崎美代子さん
 昇段審査を3週間後に控え、できる気配すら感じられない状態でいました。毎日の体ほぐしの後、[シルシのポーズ]の始めの構えを試みますが、恐怖心で頭がクラクラし、終了。子どもの頃から逆さまになることに対する恐怖心と、目眩を起こし気分が悪くなるという体験から逆立ちは一度もできたことがなく、その記憶に心身が拒否反応を起こしていたのです。こんな状態でいつできるようになれるのか…。途方に暮れる思いでした。
 今回は見送ってまたの機会に、と心の中で逃げ道をつくりはじめ頃、「大丈夫よ。いざという時は火事場の馬鹿力がでるわよ!」と、長田先生は何の疑いもない確信に満ちた素敵な笑顔で言い切られました。その言霊に背中を後押しされる思いで勇気付けられ、自分を信じてできるところまでしてみようと思いました。
 まずは恐怖心の根を意識化し、[シルシのポーズ]は3ヶ所の重点を正しく見つければ必ずできるポーズで、けっして恐くないと自分に言い聞かせました。そして、眼が回らないよう眼を閉じ、まずは脚を上げる前の姿勢までに挑戦しました。転んでもいいようにヨガマットに薄い毛布を敷き、1回試すごとに5分程休憩しながら探りました。
 おこなうたびに目眩は薄れ、3日後、5回に一度くらい見えない力がそっと引き上げてくれるような不思議な感覚で、脚が自然に持ち上げる体験をしました。
 できた時の気持ち良さと、嬉しさ、感動で、恐怖心が薄れてきました。3日後には脚を上げる前までできるようになり、あとは脚を持ち上げられれば。ところが何度いっても脚が斜めに上がるようで、途中までしか上がりません。どうしたら真っ直ぐ上がるのか、何が違うのか…。審査まであと10日という時、幸運にも長田先生、小堀先生にご指導頂くことができました。
 「背中をしっかり広げ、両手を軽く組み、両腕を八の字よりやや平行に床に着ける時、ひじが内側に向って力がかかるよう、中心を床に着けた頭をはさむように。身体が“へ”の字で両足が床に着いている状態から、息を吐きながら丹田に意識を持ちつつ、両足を少しずつ顔の方に自然に足が浮くまで近づけ、脚を曲げ、持ち上げたら前でしっかりキープし、丹田を意識をしてゆっくり脚を引き上げていく。」
 私は両腕、ひじにかかる力が外側に向っており、組んだ両手に力が入って不安定でした。丹田へ意識も弱く、キープがしっかりできない状態から脚を無理に持ち上げようとしていました。そして3ヶ所の重点は無論、呼吸と意識の置き場のバランスも大切なのだと身体で理解し始めました。丹田に意識を持ち過ぎて不自然に力を入れると脚が重くて上がりませんし、弱くても途中までしか上がりません。その加減が徐々に感覚としてつかめるようになり、心身の感覚にも変化を感じた頃、脚を一瞬上げることができたのです。
 その瞬間、本当に自分で自分にびっくりし、“自身”“自心”の世界が広がった感動がありました。この気持ちを体験できたことに感謝し、大切にして行きたいと思います。
 いつも誠意あるご指導をくださり、あきらめかけている方のために体験談を話しては?と、エッセイに応募するきっかけをつくってくださった先生に心より感謝致します。そして共に練習をさせて頂いた小島さん、教室の皆さん、ほんとうにありがとうございます。   

ヨガエッセイコンクール 2005年度 [優秀賞]

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