up!
ナゾナゾをひとつ。「とにかく上に昇りたがる生き物、なぁんだ?」
ぜったい下ではなく、上。横を見渡すためにも、上。あんまり急ぎすぎて足をすべらせ、すってんころりん落ちてゆくこともよくあります。みんなはスイスイ昇って、自分が取り残された(と思い込んだ)ら、すねて動かなくなってしまったり…。
そう、正解は「わたし」。
え? 自分はちがうって?
もしそんな人がいたら、ヒネクレているか、眠り込んでいるのに違いありません。人間は本性(ほんせい)として“上昇を希求する”存在なのですから。
子供なら1番でも成績が上がれば嬉しいし、テレビゲームはポイントやステージが上がってゆくように作られているからハマるんです。高校球児なら、どんな弱小チームでも合言葉は“めざせ!甲子園”。大人になって仕事を始めたら、お手当は100円でも上がるほうが嬉しい。役職が上がる世界でがんばったお父さんの多くが、不景気、やがて定年退職でしぼんでしまうのは、人生までが《あがり=おしまい》だと思い込んでしまうから。その点、子や孫の成長を自分の上昇と同じように感じられる女性は強い。ヨガ教室の指導者としても、教え子の成長を自分の喜びに変えられる人でなくては成功しません。それを可能にするのは、自己犠牲のようにも見える母性本能。日本人が束になって上昇してきた高度成長期が終わった頃、「これからの時代は女性と、女性的感性を持った男が活躍する」といわれた理由のひとつでしょう。
「無欲」がいちばん。そう、それも一つの道。軽いほうが上昇しやすいことを理解した人の高等戦略です。サマディ(三昧)に至るにも、すべての欲を捨てて軽くなってからアサナで体勢を整え、クンダリニーが上昇して上に抜ける。…でも、捨てることがなかなか難しいのは、たくさん持っているほうが上だと刷り込まれた観念が消えないから。キリスト教でささやかれていた「アセンション(掲挙:神が人を天へ挙げること)」が2012年に起こる!というのがいま秘かなブーム。人間にとって究極の上昇ですから。でも“究極”だからとても怖い。その怖さが、2012年に世界が終わるという話を同時に生み出すのでしょう。落ちるのならみんな一緒に!なんて。
引力に抵抗する体の方向性を見つめるアレクサンダー・テクニークで“up”がキーワードであるように、人間は“肉体的”にも“精神的”にも“霊的”にも、上昇するようにできている存在なのです。そのこと自体に善・悪はありません。つい焦って昇る方法を間違えたり、あわてて足を滑らせてしまうだけ。
今いるところが一番いい、なんていう人はそっとしておいて、2009年、努力した人もできなかった人も、迎える2010年には一歩でも“up”するよう、さらに努力しましょう。そのためにこそ足元を固めて、あとは自分の、人間としての本性に素直に従ってヨガの道を進めばよい、改めてそう思うこの年の瀬です。